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奄美屋(あまみや)。 そこはただの町中にある古い書店で、店主は商売をする気も無いのか、普段からカウンターで煙草を吸いながら売り物の本を読み耽っていた。 店内は薄暗く、本は何時から整理していないのか乱雑に陳列されていた。 店主の座るカウンターにも無数の本が積み上げられている。 それらは店主が読む本なのだろう。 店主は齢30になる男で、人当たりも悪く、店はそんな店主の態度に腹を立てて大抵は帰ってしまうらしい。 この奄美屋は普通の書店とは違っている。 普通ならば本を売るのが書店なわけだが、この本屋は「貸す」という。 要は本のレンタルショップだ。 一冊100円だそうだ。 この奄美屋は漫画が置いておらず、殆どが文字だけの本ばかりだった。例外的に百科事典等の挿絵はいいらしい。 これは店主の趣味なのだろうが、今時漫画も置いてない書店等やっていけるわけがない。 それ程貴重な本があるというならば別だろうが・・・。 「・・・貴重な本ならあるわ。 お前にとってかどうかは知らへんが・・・」 店内の本を立ち読みしていた私に、店主は珍しく話しかけてきた。 「へぇ。 それは例えばどんな?」 「例えばか・・・。 これなんかもそうやな」 カウンターに積み上げてあった本の一冊を抜き出して私に見せてきた。 「・・・これは?」 茶色い丁装の本で、タイトルは『日陰』と書いてあった。著者は・・・書いてない。 「読んでみればええわ。 読めば分かる」 「ふぅん?」 売り物では無いらしいので遠慮無く私はその本を見てみることにした。 『日陰』 日陰者というのを聞いた事があるだろうか。 天道様の元に照らされる事も無く、陰ながら働き続けるような者を言う。 ただ、毎日を消化して、ただ何かの為に、誰かの為に何かをやる事を生甲斐とする者だ。 (小説? これが貴重な本?) 私もどちらかと言えばそちらに分類される人種だが、それを大衆はつまらないと言う。 私にとってそれは詰まらない事は全く無く、むしろ人生が充実感で詰まっている。 そんな私は、仕事以外にいつも行く場所があった。 その場所は薄暗く、とても汚いが、遠慮をしないで良い所等が気に入っていたのでほぼ毎日通っている。 そこの店の主人とは最近顔見知りになって来た。彼の格好はお世辞にも綺麗とは言えなかったが、着ている青い割烹着は似合っていた。 そんな事を言えば私の白のセーターだって・・・― 「・・・・・・」 私はそれ以上読む事が出来ずに本を閉じてしまった。 「そっちの類の本は貸出料は100万や。 どうや? 安いやろ?」 店主がニヤリと笑う。 その顔がとても不気味だった。 「・・・・・・これは・・・何?」 「見たままや。 口に出すのも恐ろしいんか?」 更にニヤニヤと私の顔を舐めるように見据えてくる店主。 「・・・・・・こんな本が・・・まだあると言うの!?」 私は本の内容が信じられなくて半ば発狂気味になりながら叫んでいた。 「いくつかあるわ。 貴重な本やから普段は出さへんけどな」 店主はただの世間話をするかの様に言う。 「・・・・・・」 私は怖くなってその店を逃げ出した。 ただの偶然だとは思う。 そんな事があるわけが無いと、自分に言い聞かせるが、そんな安っぽい台詞で落ち着けるような事ではなかった。 奄美屋の店主は・・・青い割烹着を着ていた。 私も白いセーターを着ていた。 ・・・あれは私の事が書かれた本だった!! 「また来いよ。 お嬢さん」 奄美屋店主はもう既に店を出てしまった私に向かってそう呟いていたのだった。 【奄美屋の店主】 |
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| 内 容 | ニックネーム/日時 |
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少しでも怖いと思ったら負け(何) |
霧香 陸徒 2008/01/14 05:19 |
えー? 自分が書いてあるの? こわ・・・。 |
青蛙 2008/01/14 07:20 |
あ〜「小話」と銘打っているのは基本的に「短編」なのですよ〜 |
霧香 陸徒 2008/01/14 07:46 |
怖い…? |
ぱーる 2008/01/16 17:47 |
やっぱり割烹着はマズかったかぁw |
キリ 2008/01/17 01:53 |
なんか、会話が落語の会話みたいに思えた。 |
ひで 2008/02/23 05:20 |
イメージの中で |
キリ 2008/02/23 06:27 |
こええ(´・ω・`) |
ライオンキング 2009/01/22 19:57 |
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