読み切り小説『平凡な幸せ』


 軽装で背の高い女が一人町を歩く。

 夏が終わり、風が肌寒くなってきたそんな日だった。


 何も変わらない日常。

 平凡では無いが穏やかな日々がそこあった。

 寒くなってきたとしても暖かい陽射しがある。

 それ以上に暖かい…日溜まりのような暖かさがその女の周りにはあった。


 女は幸せだった。


 でもそれは…

 
                  『他人から見た幸せ』だったのか。


 良く判らない時がある。

 そもそも幸せな時に幸せを実感する事は稀で、大抵は不幸になってから噛み締めるように思い起こすものが多いと女は思っていた。

 哀しい過去や幸せな過去があったり無かったりして麻痺したりする物でもある。
幸せとは脆い物で、簡単に壊れてしまう。「幸」という字から一本線を抜くだけで「辛い」になってしまう。そんなものなのだろう。ツライかカライかはどちらも同じで、「世知辛い」のようにカライと読めるのに苦しそうに感じるから同義語で構わないと思う。



 そんな事を考えながら歩く女。
 

 女は「そういう意味」で「幸せ」だった。






「大根…」

 町を歩く私は、道行く人並みの中で呟いていた。

 別に大根を買っていく予定は無いのだが、何故か大根というフレーズが浮かんだので呟いただけだ。

 ふと自分の足を見てみると大根が2本。

 少しショックを受けてしまった。


 痩せないとなぁ…と呟きながらデパートの地下に向かっている大根2本を少し大袈裟に前後させた。
 
 意識して動かした為か、器用に左の大根が右の大根に掛かった。

「あっ…」

 バランスを戻せずコロンと転んでしまった。

「あうぅ…」

 転び易い自分の体質(体格?)を失念していた。

 二つの大根コンパスは慎重に広げないと駄目駄目であった。

 別に短いわけじゃない。

「何してたのでしたっけ…」

 転んだ拍子に、なんの目的で町に居るかも忘れてしまった。

 だが、確実に3歩以上歩いていたハズなので鳥よりは賢いハズだと自分を元気づける様に拳を握って「よいしょ」と気合いを入れ直した。
 
 同時にパンプスの踵がカタンと鳴ってビックリして少し涙目になった。

 でも、特に今日の目的を思い出したりはしない。


 そんな時、女のブルーの携帯電話が鳴り、羊を抱えた黒猫の小さなストラップが着信に合わせてプルプル震えた。

「もしもし~?」

 番号だけ携帯のディスプレイに表示されていたが、とりあえず出てみた。

 …やっぱり知らない声が聞こえた。

「貴女今何処なのか!?」

 若い女の声だった。聞いた事のあるような…。

 電話と実際の声が違うのかもしれないが、とりあえず日本語が変な人だと認識をした。

 何故か相手は知り合いのような口調だったので訝しい声で「どちらさまでしょう?」と答えると耳がキーンとなる高い声で叫ばれる。

 拍子に携帯を投げそうになってしまった。

「にゃぁ!?いいからすぐに来んさい!貴女すぐ迷子になるんだからウロウロしないっちっ!」

 声は少し違う気がするが、口調は覚えがあった。

 ソニックウェーブを鼓膜に受けてふらふらしながらも携帯を握り直した。
「みみいたい…。??えと~。もしかしてハルナ?アキトから番号聞いたの?」

 ハルナにアキト。

 幼い頃からの友人だ。

 先日新しい携帯番号を教えたのを同時に思い出した。

「マジボケかよ!昨日番号教えたの登録してないのかしらしらぁ?」

 登録してなかったらしい。

「あぁ…それで~」

「それで~…じゃねぇわよ!!時間の流れは皆一緒なのだわ!?貴女だけ30時間無いなの!」

 ハルナの言葉遣いは安定しない。

 色々な地方を4年程旅したりして培ったと昨日話していた。

 結論から言えば嘘だ。

 彼女は昔から変わっていない。

 私とは幼馴染みなのだ。

 しかし、旅をしていたのは本当で、最近再会して電話番号を教えて貰った。

「そんな事は分かってますよ。でも30時間あったらいっぱい寝れるよねぇ~」素敵ワードに心踊る。

「まぁそうね~。30時間あったら……一日20時間ぐらい働きそうやね日本人敵わんわ~」

「お身体に気を付けて下さい~」

「あ、うん。ありがと。じゃない~!またアンタのペースで和んじゃったじゃないが!ほらもうすぐ時間やよ」

 目を細めてウットリと私と同じ顔で和んでおきながら怒られた。

「了解しました~。…何の時間でしたっけ?」

 今日は何も予定が無かったわけじゃなかったらしい。女も言われて思い出したが約束をしていたので町に出てきたのだった。

「上映時間しょっ!ほら貴女のヤツなんやからね?皆で観るって約束でしょ♪」

「あぁ…困りました。演劇のチケットありません…」

 「上映」という言葉に電柱に張り付いている看板に気付いた。

 『ミスタースターライト』というタイトルの演劇の看板だった。

 仲の良い兄妹と、何をやっても駄目だけど人一倍優しい男のお話だった。

「観るのは貴女以外でんがな…」

「私はハブですか?」

「…貴女何か薬でもヤってるんじゃないかと疑いたくなるわ」

仲間ハズレにされたのかと悲しい声をあげると、低い声でハルナは言う。

「お薬はしてますよ~「覚醒剤」を~」

「ば!?本気!?」

「はい。これとこれです」

 携帯のカメラに「薬」を見せる。

 バナナ一本とパック牛乳。脳が活性化されると聞いて持ち歩いていた。

「……一度泣きじゃくるまで叩いてもいいかなお嬢さん」

 携帯のディスプレイ越しに拳を握りしめている活発そうな短髪の女が見えた。

「駄目ですよ。乱暴をするとやってしまった分心が荒れてしまいます」

 そう思うと、道の向こうから実物の女が歩いてくる。スラッとした肢体で女性にしては長身。Tシャツにキャロットでボーイッシュな印象だった。

 どうやら見付かったようだ。「やはっ☆」と片手を挙げてくるので「やふやふ」と同じ様に答えた。


「荒れさせたのは誰にゃも…」

「それで、アキトは?」

 ハルナの顔を見て、約束ではハルナの弟のアキトも来ているというのを思い出した女は辺りを見渡した。

 人混みの中から知的な眼鏡を掛けた若い男が、コソコソと現れ隠れを繰り返していたのに女は気が付いた。その姿に見覚えがあったので半眼になって目で追ってやると、すぐに諦めたように出てきた。

「悪い見ていた」

 漫才のようなやり取りを見学していたのか、女をいやらしい目で眺めてたのか、分からないが悪趣味だと言わんばかりにハルカ出てきた男を睨んだ。私は聞こえてなかったけど。

「あぁ、お久しぶりアキト」

 ごく普通に挨拶をする私。

「昨日会ったばかりでしょう!?」

 どうやら嘘を付いている顔では無いアキトと呼ばれた男に、記憶を手繰るが、やはり思い出せずに小首を捻る私。

「そうでしたっけ~」

 私の言葉にハルカがアキトの肩を優しくポンポンと叩いた。

「眼中に無いぞね…アキちゃん」

「うっせ。ほっとけ」

 拗ねる様に実姉の手を振り払ってアキトは顔が少し赤いようだ。

「??」

 怒っているのか、何かに照れているのか私には分からなかったが、どうやら自分の所為らしく思えて首を傾げた。

 そんな様子にアキトは肩を落として項垂(うなだ)れるのであった。






 次の日。

「二王子さん」

「お?今日はワンコじゃないんのなね?」

「ワコです。ワンコじゃありません」

「双葉和子(ふたばわこ)。舞台女優の24歳独身」

 「私」はフルネームで呼ばれた。

「………」

 でも、余計な事まで言っている女に笑顔で工作をしてあげる事にした。

「なにゃ?何か書いてる??」

 完成した物を見せてあげる。スケッチブックに文字を書いただけだった。

「……♪」

「すいません…」

 それを見て即時謝ってきた。

 スケッチブックには…


後頭部カチ割るぞ


 と、可愛らしい文字で書いてある。

「よう。何やってんだ?」

「アキちゃん今日は近づくなぃ。ブラックワコンな」

 そこにアキちゃんと呼ばれた男がやってきた。

 女はハルナ。男はアキトだ。

「おぉ!レアコモン!ワコ姉久し振りですね!?」

 眼鏡をかけ直し、興奮気味に私を見てくるアキト。

 珍獣でも見付けたような言い方に、私はニコニコと微笑む。

「お姉さんはそっちですよ?大丈夫?」

 「大丈夫」の前に「頭」と付いているようにアキトには思えた。

 それぐらい崩れない笑顔が胡散臭い。

「それに、久し振りかどうかなんて分からないでしょう?そんなに私を見ていたのですね?」

 昨日とは違う私を「まるで私が私じゃない」ような言い方が許せなかった。だから、意地悪を言ってみたのだけど…。


「あぁっ!ずっと見ていた!好きだワコさん!」


 顔に似合わず熱い男の子だったアキト。

「ちょ!アキト!?マジ告白!?」

 脈略が無いけれど、私は刹那的に理解していたのだろう。

 彼が本気だと言う事を。

「あら、嬉しい♪私もアキト好きですよ」

「なにゅ!?展開早っ!」

「うおぉぉっしゃぁぁぁっ!!!」

 アキトが雄叫びを上げた。

 恥ずかしいので撃ち落とそうと思う。

「いつも愚かな所が可愛いですよね♪」

「可愛いとか照れるけど嬉しいですね♪」

 言葉の弾丸は効かなかった。

 余計に恥ずかしくなるが、顔には出さないでいた。

「…いや愚弟よ。気付け遊ばれてる…」

「あら、遊んでませんよ?本当に可愛いと思ってますよ」

「愚かっての否定しーへん時点であかんやろ!?」

 ハルナは流石に解っているようだった。

「私は二人共好きですから」

「馬鹿でひとくくりにされたっ!?」

 そのつもりで言ったのでは無いけど、間違いでも無いので訂正しないでおいた。そんな二人が好きだったから。

「ワコさんが…ワコさんが…。あぁ産まれてきてありがとうオレ」

「……♪」

「だから笑顔が怖い笑顔がっ…」

 私は幸せなのかもしれない。



 次の日。

「ふたおうじー」

 仕事前にハルナを見付けたので走りながら声をかける。

「…今日はえらい幼い子っだねぇ」

「しあわせだものー」

 幸せだもの。

「そっか…。仕事がんばれな?」

「わかったー見に来てねー」

 私を見てくれる人が居て。

 演劇の仕事をしているのもそんな理由かもしれない。

 演じた私を見てくれる。

 私を評価してくれる。

 それが親しい友人なら尚更嬉しい。

「はいはい。ほら前向いて!転ぶわよ」

「だいじー(大丈夫)」

 私は手を振ってハルナと別れた。

「え………。まさかね」

 後ろでハルナが何か呟いていたみたいだけど気にしない。

 しあわせだもの。






 次の日。

 人の通りが多い休日の日曜日だった。

 スクランブル交差点を渡るハルナは見知った顔が視界に入って消えたのを感じた。

「あれ?和子?」

「………」

「人違いだった?いや、今日はそんな日って事やね」

 生気が感じられないような青い顔だったが、見間違う付き合いじゃない。

 和子の状態が不安定だと分かっているから納得はした。

 だけど、何か引っ掛かりを感じてハルナは交差点を渡りきってから立ち止まった。

 和子が居た方を振り返る。

「どうしたハル姉?」

 その様子に弟のアキトが怪訝に思い、姉の視線の先を追い見る。

 信号が赤になって車道には誰も居ない。

「アキト。うぅん。ちょっとね」

 かぶり振って嘆息一つつくハルナ。

「姉貴にしては歯切れ悪いな?何かあったのか?」

 いつもの明るい姉では無い事に不安を覚えてアキトは真面目な声で聞いた。

 なんでも無い事なら姉は茶化すハズだ。しかし、ハルナの顔には笑顔は無い。

「ん~…。ねぇアキト。和子って多重人格じゃない?なんでだと思う?」

 毎日違う顔を見せる和子をハルナは多重人格だと言った。

 見た目は普通だから、一日だけの付き合いなら分からない程「異質さ」が無いのだ。
 
 そういう「ボロ」が出ないのは彼女が女優な為か、人格がそれぞれ独立しているかだ。

 それはアキトも分かっていた。姉程では無いが、彼なりにずっと見てきた女性。

「さあな?どんな和子姉でもオレは好きだし…」

 好きだと言える女性だったからアキトは言った。

「…あんたって和子のどこが好き?」

 そんな弟の気持ちをつかみきれずハルナは問い掛けた。

 男女の違いはあるが、弟のような愛情に似た気持ちをハルナは持っていた。

 和子がいつか壊れてしまうかもしれないと不安があった。

「なんだよ姉貴。和子姉嫌いになったのか?」

「そういう意味じゃなくてっ!和子みたいに「普段」が無い人を好きになるってどういう理由があるのかなって」

「……。姉貴。たぶん姉貴が考えるのと同じさ。明確な理由は無いんだ。姉貴もそれが無いから不安なんだろうけど、人を好きになるって顔とか性格じゃないと思うんだ。少なくともオレは和子姉と一緒にいたい」

 アキトの答えはハルナに満足出来る答えではあった。

 交差点が青に変わった。

「性格も顔も関係無いなら誰でも良いんじゃない?アンタは和子を好きって固執してるだけじゃないの?」

「逆だ。固執してるから好きなんじゃなくて、好きだから固執してる。オレは守ってやりたいと思うから」

「……難しいやね。和子を同情で見てるんとはちゃうんやよね」

「当たり前だろ?きっかけじゃないって言えば嘘になるけど…」

 スクランブル交差点に再び人の波が出来る。立ち止まる二人を邪魔そうにしているが、皆避けて歩いていく。

 すれ違う顔も知らない人々はそれぞれの事情で通り過ぎていく。

 アキトは話ながらその人の流れに時間の流れを感じながら感慨にふける。

「昔…。最後に会った時より寂しそうに見えたから。でも、今はちゃんと言える。愛してるんだって…」

 弟の言葉に軽い気持ちでは無い事はわかった。

 ハルナは顎を上げて「男」を見た。弟では無く、二王子アキトを。

「そう…。なら、話してもいいんかな…。和子ね、こっちに帰って来るまで恋人が居たんよ」

「!!……居た?過去形か?」

 和子もハルナにしか話していない事だった。

 衝撃の事実に打ちしがれそうになったが、なんとか踏み留まってアキトは先を促すように頷いた。

「そや。それが相手さん身体弱い子やったんよ。半年前ぐらいやったかな…。…まぁ亡くなりはってん」

「……」

 和子と二人が再会したのは1ヶ月程前だ。
 
 最愛の者を亡くした哀しみを5ヶ月程も一人で背負った事になる。

「聞いたんは最近やねんけどね。この前ウッカリ口滑らしたって感じやったから…まだ覚えてて辛いんやと思う」

「ハル姉……オレ…」

「いいんやよ。アキちゃんは知ってるだけで。和子は親友やさかい…幸せになって貰いたいんよ」

 スクランブル交差点の信号が赤に変わり、二人の周りの人通りも少なくなった。そんな中通り過ぎていく事も無く、二人を見ている人影があった。

「勝手な言い方ですね…」

「和子!?」
「ワコ姉!」

 それは和子だった。

 いつからそこに居たのか、少し厳しい目付きで長い髪を風で揺らしながら立っていた。

「私は幸せですよ?不幸に見えますか?」

 ニコリと微笑んで言う和子。

「見えるな」

「アキトにはそう見えるのですか?…何故?」

「子供の頃…よく家に遊びに来たよなワコ姉」

「アキト?」

「だからオレなりにワコ姉がどういう事で喜んだり、悲しんだり、怒ったり、笑ったりするか分かってるつもりだ」

「そう…。今はどう見えます?」

 アキトの顔を覗き込むようにして笑う和子。

「ワコ姉は……いや、和子は泣いてる…」

「本当に愚かですね…。笑ってます。笑えてますよ?」

 顔は笑っている。

 だが、アキトには涙を溢す和子が見えていた。

 実際には瞳は濡れていないが、その瞳の奥が曇っているように感じてしまうのだ。

 彼女は…悲しくも女優だ。

「もう演じなくていいんだ和子!貴女は女優だろうけど一人の女の子だ!だからいいんだ!」

「なんで…なんでそんな事言うんですか…」

 アキトの叫びに仮面が割れるように和子の顔面が崩れていく。

「私が幸せじゃないなんて…。幸せですよ?こんなにも…」

 『幸せ』と口にする毎に和子の目から大粒の涙が溢れ出した。

「ワコ姉…」

 その姿にアキトは思わず和子に手を伸ばす。

 肩を掴んで少し力を入れると、引き寄せられるようにアキトの胸に倒れ込む和子。

 その瞬間、鈴蘭のような爽やかな香りがフワリと舞った。

「愚かな人が好きだと言ってくれたんですよ?」

 上目遣いでアキトの顔を見る和子。アキトも目を逸らさずしっかりと和子を抱き支えた。

「あ…。あぁ!オレは頭悪いけど和子が好きだ!一緒に歩いていきたい!」

「置いていくかも…しれませんよ?」

「追いかけるし!」

「嫌いだと言ってしまうかも…しれませんよ?」

「本心じゃなければいいさ!」

 アキトの目から暖かい涙が零れ、和子の頬を濡らした。

 その涙に和子の顔に微笑みを取り戻させた。

「アキト…ひとつだけお願いがあります」

「なんだ?なんでも聞くぜ」

「見ていてください…。私を。何をしても、どうなっても…貴方を感じる事が出来る確かな物を下さい」

 それ以外は要らないから…と和子はアキトにしがみついた。

「和子さん…」

「はい…」

「ひとつじゃありませんよ?」

「あ……」

 気付いてなかったらしい。

 そんな和子にアキトは軽く触れるようにキスをした。

「いいですよ。全部叶えます。お安い御用です」

「…ありがと…う…アキト!」

 恥ずかしさからか、舞台ではありえない程どもってしまう和子。

 演じる事の無い普通の女の子がそこに居た。

「…アンタら何で敬語なんよ?」

 すっかり蚊帳の外になってしまってハルナが頬を膨らませていた。しかし、笑顔だった。

「あぁ…うつった。ははは…」

 姉の一言に我に帰ったように今更照れ笑いするアキト。

「はいはい…。速攻バカップルで良ござんしたね~」

「ハルナ~」

 和子もアキトに寄り添いながらも照れて仕方無いといった感じだった。

 そんな二人に「ヤレヤレ」と呟いて、交互に見てからハルナは肩を竦めた。

「要らない御世話かもだけど、幸せにしなさいよアキト。アンタ名前が縁起悪いんだから」

「姉貴は名前負けしてるけどな?」

「なんだって~っ!?」

「春夏(ハルナ)!秋冬(アキト)!ケンカしないで下さい!」






 こうして、私は伴侶を見付けた。

 季節が巡り1年後。

 籍を入れた。


 そしてまた1年後。

 お腹にはアキトの赤様(赤ちゃん)が宿った。無事に出産した。男の子だった。


 名前は「ナツキ」。

 夏秋でナツキ。

 ハルナの名前とアキトの名前から貰った。

 ハルナが「私とアキちゃんが作った隠し子みたいな名前だじぇ☆」とか言ってたけどそういうのじゃなくて、夏に再開して秋に実った二人だからって事だったのだけど…。

 ハルナが嬉しそうだったから黙っておく。

 親友だからね。

「和子はあれから「出てない」のね?」

 人格が変わったりしないか春夏には心配だったが、その心配もこの二年の間杞憂に終わっていた。

 何が人格に関係したのかは明確には分からなかったが、和子と秋冬は幸せに暮らしていた。

「あぁ。心配無いよ姉貴」

 二年の間に培った時間が彼の自信になっていた。

 もう大丈夫だと言えると秋冬は思っていた。

「いつ再発しても…約束したから」


 そして、また再発しても…ずっと一緒だと誓った。一生の約束だった。

「ナツキたんの為にもがんばれな、愚弟よ」

「頑張ってるよ。二人目」

「姉相手に下ネタかよ!?バカちんがぁ!!」







 その後、結局二人目の赤様は無かったけれど、幸せに暮らしました。









 幸せとはなんだろう?


 時々分からなくなる。


 誰かを好きでいる事?


 誰かを守る事?


 そんなんじゃない。



 私が私で居られる事。


 演じる事の無い普通の事。
 

 普通の…『平凡な日常』が幸せなのかもしれない。


 私の性格が変わってしまう事は、どれが普通になるのか試していたのかもしれない。

 

 時々思う。


 私が私で無い時は私では無くなるのか。

 
 私が好きだと思える人が居る。
 

 私以外の私が楽しいと思う人が居る。


 私のまわりには幸せがある。

 
 それは他人から見た幸せかは分からない。

 
 好きな男女が一緒にいる。好きな友人と一緒にいる。普通だ。

 
 それが『平凡』だから良い。



              『平凡な毎日をありがとう』

 
 私は息子の頭を優しく撫でて眠りについた。


                             (読切小説『平凡な幸せ』終わり)

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この記事へのコメント

ぱーる
2010年06月06日 13:53
――― !? んんっ !?
ごめんなさい、何かこの話は私には意味不明でした(;´Д`)
キリ
2010年06月06日 14:18
大丈夫。書いてる人が一番分かってないから(死)

普段と違う性格のキャラを書きたくて失敗しました(馬鹿)

失礼しましたW

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